転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


97 凄い秘密ほど話しても信じてもらえないことが多いよね



 カランカラン。

「こんにちわ!」

 僕が錬金術ギルドに着いて中に入ると、そこにはロルフさんとバーリーマンさん、そしてなんとお父さんが居たんだ。

「遅かったな、ルディーン。今までどこに行ってたんだ?」

 生クリームを発見して嬉しくなった僕は、他にも何かあるかも? なんて思いながらその後もゆっくり屋台を見て回っていたせいで、錬金術ギルドにたどり着いた時にはお父さんが先についてたみたい。

「えっとね、屋台市を見てた。そこでね、凄いもんを見つけたんだよ」

 僕は得意満面でそうお父さんに教えてあげたんだけど、

「ルディーン君! 今度は何を? 何を見つけたって言うの?」

「わぁっ!」

 それに対して、お父さんが何かを言う前にバーリマンさんが凄い勢いでその話に食いついてきたんだ。

「えっと、僕が見つけたのはねぇ、いろんなお菓子を作る材料だよ」

「材料?」

 そうなんだ。僕は生クリームを見つけた後、もしかしたら他にもお菓子の材料になる物があるかもしれないって思って、他の屋台も見て回ったんだよね。

「うん。最初に生クリームを見つけてね、その後ベーキングパウダーぽい物も見つけたんだ。あとカカオ豆が無かったのは残念だったけどアーモンドみたいな豆も見つけたから、これでいろんなのが作れるようになったんだよ」

 バターは高いから今まであんまり食べられなかったけど、あの筒と生クリームが有れば自分で作れるようになるし、何よりホイップクリームが作れるようになるのが一番嬉しいよね。
 それにベーキングパウダーがあればホットケーキも作れるもん。生クリームも見つけたから、とっても美味しいのが作れると思うんだ。

 あっ、でも他にいろんなのを作ろうと思ったらオーブンがいるよね。でも、今持ってる魔石でもオーブン、作れるかなぁ?

 そんな事を考えていると、バーリマンさんが、不思議そうな顔をしながら聞いてきたんだ。

「えっと、ルディーン君はそれで何を作るつもりなの?」

「何って、お菓子だよ」

 たからそう教えてあげたんだけど、そしたら物凄くがっかりした顔をされたんだよね。

「なんだ、お菓子かぁ」

「え〜、お菓子は大事なんだよ。お兄ちゃんやお姉ちゃんも喜んでくれるし、スティナちゃんだってお菓子、大好きなんだよ!」

 どれだけお菓子が大事かを一生懸命話したんだけど、バーリマンさんが気になったのはそんな僕の話じゃなかったみたい。

「スティナちゃん?」

「ああ、スティナちゃんって言うのは、嫁に言ったうちの一番上の娘の子供ですよ。ルディーンとは仲がいいんです」

 どうやら聞いた事がない名前が出てきたから気になったみたいなんだ。
 でもそっか、スティナちゃんって言ってもバーリマンさんには解んないよね。

「そうか、そのスティナちゃんが喜ぶからお菓子を作ってあげようって考えたのね」

「うん、そうだよ。それにね、お母さんや近所のおばさんたちも大好きなんだって。だから作れるなら作らないといけないんだよ」

 お母さんでも作れる雲のお菓子製造機を作ってあげたら、これで順番待ちしてもらわなくてもすむって言ってたもん。だから新しいお菓子を作れるようになったら、きっとみんな喜ぶと思うんだ。

「ふむ。ところでベーキングパウダーとはなんじゃ?

「ベーキングパウダーじゃなくって、ベーキングパウダーっぽい物だよ。えっとね、鑑定解析で調べたら重曹ってやつにクエン酸ってのを混ぜた粉だって。雑貨屋さんに売ってたんだ」」

「おお、あれか。じゃが一体何に使うつもりなんじゃ? あれは食材ではないじゃろう。お菓子を作った後の食器を洗うのに使うのかな?」

「えっ? お菓子の材料にするつもりなんだけど……みんなは使ってないの?」

「うむ。あまり聞いた事はないのぉ」

 そっか。売ってたのも雑貨屋さんだし、普通は別の事に使ってるのかも?

 僕、鑑定解析するまで牛の乳の上澄みが生クリームだって解んなかったから、他にもそんなのがあるんじゃないかって、屋台に並んでる見た事がない物や解んない物は片っ端から鑑定解析してたら見つけたもんなぁ。

 だからさっきから言ってるベーキングパウダーっぽい物はベーキングパウダーそのものじゃないんだよね。鑑定結果の用途の欄に食材を膨らませる事もできるって書かれたから、ベーキングパウダーみたいな物って呼んでるだけなんだ。

「それで、それをどう使うのかな?」

「えっとね、小麦粉にちょっと混ぜて焼くとプクって膨らむんだ。だからお砂糖とか卵とかを入れて焼くとやわらかいパンみたいになって美味しくなるんだよ」

「なるほどのぉ。酵母の様な働きをするのじゃな? しかしルディーン君はよくそんな事を知っておるなぁ。何かの本で読んだのかな?」

「違うよ。前世の記憶? ってのがあって、それで知ってるんだ」

 僕が前世の記憶ってのがある事を、そう言えば今まで誰にも言った事なかったなぁ。
 そう思いながらロルフさんに教えてあげたら一瞬不思議そうな顔をした後、にっこりと笑ったんだ。

「そうか、ルディーン君は前世の記憶とやらがあるんじゃな。だから色んな事を思いつくのかい?」

「そうだよ。あっでもね、前世の記憶ばっかりじゃないよ。だって前世の記憶には魔道具なんて無かったもん。それに魔物を探すのとか、鑑定解析を覚えたのも前世は関係ないんだよ」

「なるほどのぉ。と言う事は魔道具の作り方とかはルディーン君が考えたのじゃな。ふむ。やはりルディーン君は賢いのぉ」

「えへへっ」

 前世の記憶の事を話したらみんなどう思うんだろう? って思ってちょっと心配したけど大丈夫だったみたい。
 僕はホッとしたのとロルフさんに褒められたのとで、嬉しくなっちゃったんだ。





 前世の記憶とは、ルディーン君の想像力は本当にたくましいのう。

 小さな頃は皆、思い浮かべる物じゃ。自分は何かの生まれ変わりではないかと。
 そう、勇者の生まれ変わりであったり、歴史に名を残した賢者の生まれ変わりであったりとな。

 じゃが大人になるにつれ、現実と言うものが見えてくる。
 しかし、子供の頃は夢を見るのも成長に繋がるのじゃから、ここで否定するべきではなかろうて。

 そう思ったわしは、ギルドマスターに目配せして、カールフェルトさんにそう伝えるようにと合図を送ったんじゃ。そうせぬと、ルディーン君の話を否定し、折角開いている想像の翼をたたませる事になってしまうかもしれないからのぉ。

 しかし前世の記憶か。きっと記憶も残らないほど小さい頃に誰かから聞かされた事を思い出しているだけなのじゃろうが、案外彼の凄さは普通なら忘れてしまう幼少の頃の記憶でさえも再構成して実用に足る物に組み替える所なのかも知れぬ。

 そんなルディーン君は鑑定解析と言うスキルを得た事によって、これからも色々な発見や発明をしてくれるじゃろう。

 本当に楽しみじゃ。



 前世の記憶、信じてもらえませんでしたw

 まぁ、ルディーン君はまだ8歳、今で言うと小学2年生ですからねぇ。そんな子が、僕は前世の記憶を持っているって言い出しても、周りの大人はきっと今回のロルフさんのように、優しい笑顔で肯定してくれることでしょう。


 木金と出張の為、更新ができません。なので次回更新は多分月曜日になると思います。
 とりあえず土日は新しく書いているボッチプレイヤーの冒険のオリジナル版執筆をしないといけないので。

 ただ、もしかすると短めの閑話くらいは書くかもしれませんが。


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